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727■■ 引き出しカレンダー

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日曜日は一日雨だった。

朝食を済ませると直ぐに部屋に戻り、残りの引き出しの組み立てを続けた。
総計42個の引き出しは横7列×縦6段の枠に収まるようになっている。
7列は日曜から土曜日までの7から来たもので、1段目にはこの曜日が並ぶ。
残り5段の35個の引き出しには1から31日までの日日が入り、カレンダーになる。

月が替わるごとに曜日の引き出しか日日の引き出しを動かしての調整が必要だが、その手間もまた楽しいとする作者のハートが伝わってくる。
何より42個の引き出し全ての色が違うのがいい。

引き出しの4面は自由に作り上げることができ、勿論カレンダーとしてではなく小物を入れる只の引き出しとして使ってもいい。
残念ながら、付属していた曜日と日日のデザインが好きになれず、カレンダーとしては未だ完成していないが、当面は一つのオブジェとして楽しもうと思っている。

筆者もカレンダーのデザインは何度もしたことがあり、それらは実際今も使われている。
だからシンプルさを貫く難しさもよく分る。
だから、このカレンダーの小さな写真を初めて見た時、作者の意図する全てが理解できたし、直ぐに欲しいと思った。

要領が摑めると引き出しは思ったより早く完成した。
外は雨だし、昼までは本を読んで過ごし、午後からはいつもと違う懸け流しの温泉で過ごした。
その休憩室の窓からは幾重もの雨筋を通して、色付いた実をたわわに付けた柿の木が何本も見えていた...。

by finches | 2011-10-31 05:03 | 時間
726■■ 続・組み立てる

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襖紙の貼り替えを頼みたい表具屋の主に三度目にして会えた。
一度目は不在で、戻る時間を確かめその時間に出直して来ると名を告げ帰った。
出直した二度目も不在で、今度は鍵まで掛かり人の気配すら失せていた。
次の朝、電話をすると、今日は遊びでゴルフに行ったと言う。
仕方なく連絡を欲しいと頼み電話を切った。

そんな遣り取りから、想像以上の腕の持ち主ではないかと思った。
堅物で手ごわいが腕は良い、そんな職人ではないかと想像した。
三度目に訪れた時、主は戸口まで出て迎えてくれた。
耳が遠いのは奥方と同じらしい。

紹介者の名を告げ、次に何故頼みたいかを説明したが、どうやらほとんど聞き取れていないようだった。
作業台の上には、紙と筆記具、襖紙の見本帳、そして住宅地図がきちんと並べて置かれていた。
そして、先ずは襖紙から話は始まった。

どうやら高齢で耳も遠く大きな仕事は断っているようで、襖二枚ならやってもいいと主は言った。
近く表具屋を廃業することを考えているとも言った。
紙は『鳥の子』でと頼むと、用意されていた見本帳は下げられ、新しい見本帳が置かれた。

紙を選び次に引手も換えたいと言うと、安物しかないと言う。
取り寄せも出来るが50個単位と言う。
欲しいのは二個で、廃業を考えている主に取り寄せを頼むのは酷だと思った。

仕方なく、引手はこちらで用意し届いたら連絡すると、紙の手配だけを頼んで主と別れた。
引手は富山県の高岡の金物屋に注文した。
きっと週明けには届くだろう。

襖の貼り替え一つでも様々なことを経験するものだ。
その主はもっと若い表具屋を紹介するからと言ったが、それを断った。
紹介者が一人名を挙げたこの主こそがこの仕事を頼む相手と決めていたからだ。

引手の手配を終えると、件のカレンダーの組立に入った。
音楽を聞きながら『角をシャープに』を心掛けて真剣に紙を折り、一つ二つと組み立てていった。
引き出し42個の完成は遠い。
そこで、朝の計画通りにいつもより早めの温泉に出掛けた。

外はまだ暗いが雨の音が聞こえている。
日曜日の今日も雨だろう。
そんな日は箱を組み立てるのに向いている。
今日、若しかしたら、カレンダーは、完成するかも知れない...。

by finches | 2011-10-30 03:31 | 時間
725■■ 組み立てる

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今日は雨の予報が出ている。
そのせいか今朝はそれ程寒くはない。
だが、ストーブは点けていて、青い炎が音も無く燃えている。

寝所から外に出て懐中電灯の灯りを頼りに庭を横切り、真暗な部屋に上がってスタンドを、一つ、二つ、三つ、と順に点ける。
次に床に座ってストーブの筒を倒し三ヶ所に火を入れる。
そして、小さなオレンジの炎が繋がって一つになるの待って燃え芯を調節すると、パッと綺麗な青い炎に変わる。

それから、いつもの椅子に座る。
今朝は大東京写真案内の復興版にザッと目を通した後、『世界でいちばん やかましい音』という絵本を一冊読み、『レイチェル・カーソン』をパラパラと捲り、最後にインターネットで昨日の続きを読んだ。
時計を見るとこれで一時間半が過ぎていた。

六時を少し回ってノートを開いた。
今朝はテーブルに広げてあった『三越の包装紙』に包まれていた中身を書くことにした。
まだこれから組め立てるところで、これが一体何やら分からないだろうが、これが完成するとカレンダーになる。
今日はきっと一日雨だし、午後に一つ約束があるだけだから、ゆっくりとこれを組み立てて、夕方はいつもより早めに温泉に行くのもいいと思う。

雨の土曜日、音楽を聞きながら、こんな紙を折って組み立てるカレンダーを作りながら過ごすのも、たまにはいいと思う。
さてと、美しく仕上げるには角をシャープに折らねば...。

by finches | 2011-10-29 04:37 | 時間
724■■ 百歳
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読書の秋とは関係ないが、数え上げると今月は少し本を手に入れた。
毎月送付されてくる専門誌の3冊以外に、専門書3、定期購読の歴史系が4、趣味系1、地図1、雑学系2、詩集1、合わせると15冊になる。

これらのうち専門誌3冊はパラパラとページを捲るだけでほとんど読まないし、歴史系の4冊はまだ袋から出してもいない。
専門書3冊についてはザッとその内容を把握したので、後は必要に応じてその中の項目に目を通せばいい。
だから、15冊からこの10冊を引くと残りは5冊になる。

趣味系とはパソコン製作の雑誌で、まだ問題なく動いてはいるが、そろそろWindowsXPに代わる1台を主機にした方が良さそうな予感がして読み始めたものだ。
地図は昭和初期の東京のもので、こちらは直ぐにどうこうということはないが、何かを調べる時の状況で引っぱり出して使うためのものだ。
雑学系はオークションで落札した古本でまだ手元に届いていない。

詩集は柴田トヨさんのもので三日前にもらった。
柴田トヨさんの詩のことはこれまでにも『くじけないで』と『桜とトヨばあちゃん』で触れたことがある。
今回の詩集は百歳を迎えた著者の第二作目となる。

昨朝ブログを休んだのはこの詩集を読んでいたためだ。
易しいことばがならぶ文体が何故か心に響く。
百歳をして、詩をつくることは無駄なものを削ることだと彼女は言う。
このこと、詩だけではなくすべてに言えることではないだろうか...。

by finches | 2011-10-28 05:54 | 無題
723■■ 影と音
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正体の分らない影が動きゾッとすることがあるが、障子に映る影は柿の木だと分っているから、それ自体は見えなくても障子越しの借景として楽しめる。
だが、正体の分らない音が屋根から聞こえてくるといのは余り気持ちの良いものではない。

この部屋に守宮と小蜘蛛がいるのは分っている。
前者はモタモタと床を斜めに這い、後者はピョンピョンと床を真直ぐに跳ねる。
両者とも好きではないが、幼い頃から家に居ついて家を守ってくれているのだと聞かされていたせいか、さして悪さもしないせいか、それらに危害を加えようとは思わない。

だが、屋根からの音はそれでも音だけなら我慢もしていたが、小さな液状の糞が時たま落ちていて、それがまた取れないときて、その音の元を絶つ決心をした。
そして、昨日は朝から三つの大型蚊取り線香を書架の上に置き、屋根裏の野地板を燻す作戦に出た。

燻されたせいか時々カサコソと音がしていた。
上を見ながら音の出何処を想像したが、どう考えても隙間は野地板と瓦の間しか存在しない訳で、そこに何かがいるのなら糞の形状から蝙蝠や鼠が頭に浮かんだ。

午後からは蚊取り線香の煙は筆者の鼻の高さまで下りて来て在室困難となり、正体不明の相手に対して駄目押しに更にバルサン型鼠忌避剤をセットして部屋から退避した。

そのせいで今朝は窓を全開にして書いている。
寒い。
完全防寒体制に加え肩掛けと膝掛けを纏い、ストーブも近付けている。

天井からの音は聞こえない。
音の正体は分らないが一先ず昨日の燻し作戦が効を奏したと考えていいだろう。
しかし、床に一つ駄目押しのように残された液状の糞は、また来るからと言わんばかりに思えた...。

by finches | 2011-10-26 05:03 | 無題
722■■ 三越の包装紙
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日本橋三越からの荷物が届いた。
普通は包装紙というものは何かを包んでいて、全体のデザインの一部を覗かせているだけだが、このように惜しげもなく全体を開けっ広げにした状態で見るのは初めてだ。

三越の包装紙はこれまでにも広げて見たことはあったが、その濃いピンクの模様が何をデザインしたものなのか、どこからどこまでが繰り返されているのか、一体誰がデザインしたのか、いつ頃からあるのか、それらについてはとんと知らなかった。

思えば四国の丸亀にある猪熊弦一郎現代美術館を訪れたことはある訳で、そこできっとこのデザインにも触れていたのだろうが、そんなことなどとんと忘れていた。
そう、この包装紙のデザインは猪熊弦一郎画伯によるものだが、mitsukoshiのロゴが当時三越宣伝部の社員だった漫画家・やなせたかし氏によるものだと知ってまた驚いた。

このデザインには『華ひらく』という名前がある。
そして、このデザインが生まれたのは1950年のことで、『クリスマス用に百貨店のシンボルになるようなオリジナルの包装紙を作ろう』という企画で生まれた、日本初のデパートの包装紙であることも分った。

そして、この『華ひらく』と名付けられたデザインは、画伯が千葉の犬吠崎を散策中に海岸で波に洗われている石を見て、「波にも負けずに頑固に強く」をテーマにしようと考え生まれたものであることも分った。
そう、あのアメーバのようなゾウリムシのような変な形は石で、付け髭のようなあの変な形は波だと分った。

どこからどこまでが繰り返されているのかも分った。
それは16の図形の繰り返しで、mitsukoshiのロゴはその中の2つに、三越マークはその中の4つにあしらわれていた。
こうやって見ると原画が見事なことは言うまでもないが、そのデザインを壊すことなく絶妙のバランスとセンスでロゴとマークを嵌め込んだ『やなせたかし』もまた恐るべしと思った。

開けっ広げに包装された包装紙から、その濃いピンクの模様が何をデザインしたものなのか、どこからどこまでが繰り返されているのか、一体誰がデザインしたのか、いつ頃からあるのか、これらの疑問の全てが解けた。
次はこの包みの中に入っているものが何だったのか、それもまた紹介したい。
それはきっとこの『華ひらく』にぴったりの、心のこもったものだと思うから...。

by finches | 2011-10-25 03:48 | 時間
721■■ 帝都復興記念絵葉書
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大正12年9月1日、関東地方を未曾有の大地震が襲う。
この関東大震災により東京は壊滅的な被害に見舞われるが、迅速且つ的確且つ計画的に帝都復興に向けて動き出し、その世界に類を見ない帝都復興事業を昭和5年に完成させる。

その震災復興事業の完成を記念する絵葉書の一つがこれだ。
他にいくつか図柄や扱った写真の異なるものを知っているが、これは四枚がセットになっていて、全てに清洲橋をあしらった帝都復興事業完成記念スタンプが押されている。
日付は昭和五年三月二十六日と読める。

他の帝都復興を祝う絵葉書でも見たことがあるが、この絵葉書にもその千代田小学校の写真があった。
あったからこの絵葉書を購入したとも言えるのだが、ここからも震災復興事業の要の一つに小学校建設があったことを窺い知ることができる。
因みに千代田小学校とは昭和4年12月に竣工した復興小学校で、両国橋南の隅田川右岸に位置していた。(現日本橋中学校の場所)

暫くご無沙汰していた震災復興小学校や震災復興橋梁をまた時々取り上げる気構えにこの写真を選んだ。
まだ手持ちの資料の整頓が思うようにできてないが、それらをストレスなくスムーズに取り出せる環境を早く整えたい。
その時はこの千代田小学校を真っ先に取り上げようと思う...。

by finches | 2011-10-24 06:03 | 復興
720■■ 猿楽橋
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秋のせいか橋が恋しくなった。
橋を書く時は予めある程度の情報を持って書き始めるのがこれまでだが、この橋についての予備知識は全くない。
予備知識といえば、並木橋から代官山へ向かう山手線に架かる橋で、これまで何度もこの橋を渡り下の道も何回か通ったことがあるくらいだ。

灯具の形からはこの橋が昭和初期に造られたものと思われる。
橋の構造も同じものが幾つも存在する。
だが、この橋で筆者の興味を惹いたのは、橋脚を支持する足元のピンが傾いて基礎に繋がっていることだ。

これは筆者の想像に過ぎないが、橋脚柱のフランジプレートの切り欠き形状とピンの形を見ると、元々このピンは垂直だったのではないかと思えてならない。
それが何らかの理由で基礎を造り替える必要が生じ、既存の基礎を撤去することが出来ない理由から、新設の基礎を既存の基礎に絡めたのではないかと思う。
だから、力を伝える軸線が斜めに移りその為にピンを回転する必要が生まれたのではないかと思えてならない。

山手線にはユニークな橋が幾つもあるが、取り分け原宿・目黒間に土地感がある。
この橋の隣にある歩道橋はよく撮影に使われていて、何の変哲もない橋だがどことなく親しみがあったりする。

ところで、今度この橋に行ったら反対側の橋脚のピンを見てみよう。
山手線を跨いで両方とも基礎を造り直す可能性は少ないだろうから、もしかしたら反対側のピンは地球に垂直に建てられているのではと、勝手な想像を巡らしている...。

by finches | 2011-10-21 04:09 | 空間
719■■ 歯振
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縦に真直ぐに入った線は鋸挽きの跡だ。
細いのは手鋸によるもので、太いのは電動の丸鋸によるものだ。
前者の溝巾は1ミリ、後者は2ミリある。

この場合の溝巾の違いは鋸の厚みによるものだが、厚み以外にもあさりの違いによって溝巾には差が生まれる。
あさりのない鋸を使うと手鋸で挽いたものより更に細い線をつくることができる。

歯振と書いてあさりと読む。
あさりとは鋸歯の先に作られた振れのことで、挽き巾を広げて鋸と木との間の摩擦抵抗を少なくし、鋸屑を外に出す役目も持っている。
目立てでは鈍くなった歯先を鋭く研ぐと共に、このあさりの狂いも補正されるが、左右対称にきちんとあさりが出来ていると、歯の間に針を入れるとスーと流れるようにその間を滑り落ちて行くと聞いた。

左右であさりが狂っていると、真直ぐに切ろうとしてもその癖のある方に鋸が進むそうだ。
だから、真直ぐ切れない場合は腕だけではなくこのあさりが狂っている可能性もある。
だが、今の機械加工された鋸は良く出来ているから、真直ぐ切れないとすればあさりではなくやはり腕の問題だろう。

写真の溝は和紙を挟むための溝巾を決めるためのものだが、腕のいい大工の仕事はこんな線ひとつを見ても気持ちのいいものだ。
頭で考えたものをこうして形で確かめてみると、改良すべきことと同時に、また新たなテーマも見えてくるものだ...。

by finches | 2011-10-19 05:31 | 無題
718■■ アラジン・ブルーフレーム
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先週オークションで落札したばかりの古いアラジンのブルーフレームに火を点けた。
何十年も変わらない青い炎が綺麗だ。

オークションではこれよりもっと古いイギリス製のブルーフレームも狙っていたが、こちらは迂闊にもオークション終了前に眠ってしまい寸時のところで落札を逃した。

現在のブルーフレームには外筒の周りに安全ガードが付けられていて、それによってこのストーブのシンプルな美しさが損なわれている。
決してビンテージものが欲しいわけではないので、現在の販売価格以内で買えるのなら、オークションで古いヒーターを手に入れたいと思ってオークションに参加した。

筆者がオークションで買うのは書籍が主で、これだと一冊数百円程度で済ますことができる。
だが、これまで筆者にとって高額と思われるオークションにも二度ばかり参加したことがある。
一つは数枚がセットになった東京市の古地図だったが、その古地図一枚当りこのくらいまでなら出す価値があると値踏みをして臨んだものの、いくら入札を繰り返してもその上を行く入札者がいて、これでは切りがないと諦めた。
もう一つは後藤新平直筆の軸だったが、こちらも筆者にとって高額と思われるところで手を引いた。

オークションは熱くならずこのくらいで楽しんだ方がいいと思う。
自分の上限を決めて楽しみ、それより低い額で落札できたら、してやったりと思うくらいが丁度いいと思う。

手に入れたブルーフレームには傷もあれば錆もある。
だが、完全燃焼している証の青い炎はこのストーブが数十年前に完成の域に既に達していたことを示している。
現在まで多少の改良は加えられたにせよ、その基本精神は変わらず、今目の前にあるものが中古だとは思えない誇りに満ちた光彩を放っている。
大事に使われてきたのだろう、丁寧に磨かれたストーブに「これからも大事に使うことを引き継ぎます」と、そっと声をかけた...。

by finches | 2011-10-17 04:37 | 持続