<   2013年 04月 ( 3 )   > この月の画像一覧
982■■ 採石場跡

b0125465_647927.jpg



去る日曜日、散砂を求めて採石場を歩いたことがある。
それまでは散砂は埠頭に山積されたものを買うものとばかり考えていたが、自分の足で歩いてみると掘り出される山によって、つまり採石場によってそれは微妙に違うことが分かった。

散砂を探し歩いたのは、旧家を歴史資料館に改装した庭一面に敷かれている散砂が、どうも他とは違うという思いが頭の片隅で燻っていたからだ。
頭の中ではその散砂を採った採石場は中学一年の臨海学校で訪れた海の、その岬の先にあった採石場と重なって、きっとあの場所に違いない、そう勝手に思い込んでいたのだからたわいも無い。

その日、訪れた一つがこの採石場で、既に廃業して年月が経っているらしく、入口には立入禁止のロープが張られ、かつて船に直接積み込んだ錆びた桟橋からは、ここがかつて空港の埋め立てに使う砕石を採った採石場であることが窺えた。

山を削り地の底を掘った跡が、切り立った高い崖と湖となって静寂の中に取り残されていた。
そこは覗き込むと引きずり込まれそうな殺気に満ちていて、高所恐怖症の筆者にはこれ以上近付くことは到底出来なかった。

この景色はここまで来るか、船に乗って海からでないと、見ることはできない。
人家の方からだと雑木の生い茂った普通の山にしか見えず、その裏側が半分削り取られ、その底には青い水を湛えていようなど想像すらできないだろう。

立入禁止のロープを越え、恐る恐る奥まで入った。
そこで目に飛び込んできた世界、散砂探しの小さな冒険が世にも不思議な大きな体験をさせてくれた...。

by finches | 2013-04-25 06:53 | 遺産
981■■ 窓下の景色

b0125465_11253211.jpg



風化花崗岩をクラッシュして小粒にしたものを散砂などと名付けて売っている。
花崗岩が風化した土は真砂土と呼ばれるが、その土を掘ってふるいにかけると天然の風化花崗岩の豆石が採れる。
クラッシュして人工的に作られたものと違って、天然のものには柔らかな味わいがある。

その天然の豆石を幾つもの円錐形の山にして置いていたが、それが伐採木を乾燥させるための格好の支点となり、最後には比較的口径の大きい数本を残して玄関先のオブジェにした。
今は、その井型に組んだ伐採木の間に自然に落ちた柿の枝と、剪定で間引いた蜜柑の枝を挿している。

隣人もやって来る人もきっと不思議に思っていることだろう。
筆者としては花を活けているつもりなのだが、きっと万人にはそうは見えないだろう。

我が家で『松本ブルー』と呼んでいる朝顔をここに植えたいと思っている。
無数の青い花が創り出す空間、それはきっと幻想的な世界だろう。
Heavenly Blue、それは一人の亡き友人が好きだった花だ...。

by finches | 2013-04-14 11:32 | 無題
980■■ 無垢な季節の始まり
b0125465_11104728.jpg


啓蟄のあたりから姿は見えねど、微かに蠢く動物たちの始動の気配を感じ始めた。
まだ冬を纏った地面は殺伐としていて、取り残された落葉はこの数カ月虫たちによって分解されることもなく、ただ風にカラカラと翻弄されるままに身を任せ、仕舞にはいくつかの吹き溜まりに集められた。

春分のあたりから色は見えねど、其処彼処から淡く色づく植物たちの始動の気配を感じ始めた。
まだ冬色の殻に覆われた芽先からも、芽吹こうとする生気の色を感じ、それらは次第に空間のあちこちで一斉に色づき始めた。

満開の桜を散らす時ならぬ冷たい雨の中、清明の輝きに見蕩れた。
木々は枝先に小さな若葉を付け始め、野草は青々とした葉を広げ、蕗は若葉を軽快に持ち出し、キャラブキは象の鼻のような小さな葉を広げ始めた。
葉を垂れていたフイリヤブランも真っ直ぐに上を向いて伸びる若葉が顔を出し始めた。

傘をさし、しゃがんで、美しい清明の世界を堪能した。
地上に蠢く動物はいなかったが、土の中で蠢く動物たちの躍動の気配を静かに感じ取った。
清明、再び無垢な季節が始まった...。

by finches | 2013-04-07 11:16 | 季節