011■■ 白川郷
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白川郷と五箇山の相倉、菅沼の三集落が世界文化遺産に登録されたのは1995年。
この一帯が豪雪地帯であった為に周辺地域との道路整備が遅れ、そのことが合掌造りに代表される独特の文化を奇跡的に残したと、その登録理由にあった。
三集落の一つ白川郷も今では観光地となっていづこも同じ、観光客がゾロゾロと歩く秘境となった。
だが観光客が去り、静寂が世俗にまみれていた衣を剥ぎ取ると、そこには紛れも無い郷の景色と静けさが戻っていた。その景色を見て、吉野ヶ里(弥生時代の遺跡)の竪穴住居と家形埴輪(古墳時代)の記憶がこの合掌集落と重なった。

切妻合掌造りの家屋とは少し趣きが異なる粉引き小屋、倉、農耕と山仕事のための倉庫などに、この家形埴輪を彷彿とさせるDNAを感じた。これら大小の建物が混在する景色が、また余計に弥生時代のそれへと思いを馳せさせた。
白川郷の切妻合掌造りの家屋は棟を南北に揃えることの中に、整然とした規則性が隠されている。
そしてその家屋を田圃と融雪のための池がジグソーパズルのピースのように曲線を描いて取り囲んでいる。
整然とした合掌家屋だが、藁葺屋根の丸みがその硬さを消し去り、田圃と池と畦道の曲線と溶け込んで、角の取れた美しい日本の美へと昇華している。

この白川郷も実は昭和の初め頃にブルーノ・タウトによって世界に広められたものだ。
否、日本人に日本の心と日本の美しさを教えてくれたと言えるかも知れない。
どんなに世俗にまみれ変貌を遂げようが、それが文化として次代に受け継がれる様の中には、美と心がある...。

by finches | 2009-04-23 22:03 | 空間


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