言問小学校は旧本所区(現、墨田区)の最も北のはずれに位置する。 隅田川に架かる桜橋から少し白髭橋寄りを川岸から少し入った辺りに建っていて、ちょうど隅田川を挟んだ対岸には今戸小学校があった。 言問小学校は復興小学校と言われる117校には入らないが、昭和12年に完成した鉄筋コンクリート造の小学校で、いわゆるインターナショナルスタイルに分類できる。 様々な建築様式の過渡期的表現が多い復興小学校は、概して道路側とグランド側、即ち外皮側と内皮側の表情・印象が異なるものが多い。その理由として筆者が考えるのは、廊下が面することが多い道路側は開口部の大きさという制約から開放され、比較的自由なデザインが可能だったのに対し、教室が面することが多いグランド側は開口部の大きさの制約を受け、そのデザインをまとめるには設計者の力量が大きく左右したと思われる。つまり、概して正面を向けることが多い道路側のデザインの方が出来が良いのはこのためだと思われる。 それに対してインターナショナルスタイルの校舎は、建設された地域が異なっていても、どれも完成当時に「白亜の校舎」と言われたことからも分かるように、他の過渡期的模索的表現の校舎と比較して、モダンで機能美に満ち溢れ、そのデザインは建物全体に亘って一つの秩序で統一された美しさがあった。 この小学校の特徴に写真の低層部分がある。ル・コルビュジェがその近代的建築の表現において直線と曲線を使ったことは周知の通りだが、恐らくこの言問小学校の設計者は、当時雑誌に紹介されたコルビュジェの建築を見ていたのかも知れない。 因みに、コルビュジェのパリ救世軍本部が完成したのは1933年、昭和8年のことだった...。
by finches
| 2009-07-18 06:56
| 復興
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