ある冬の写真だ。 七輪に火を熾し、五徳を置き、金網を少し炙り、蕪と馬鈴薯をそれぞれ二個づつ焼いた。 蕪と馬鈴薯は母が育てた自家製で、大きくはないが粒が揃っているので、金網の上に交互に並べてみたくなった。 そして、質素で慎ましやかな日本の食と暮らし、その中にともにあった道具のことを考えた。 七輪の中ではめらめらと備長炭がゆっくりと燃えている。 五徳は程よい距離をつくり、野菜にゆっくりと火が通っていく。 炭火を熾すのは面倒だが、これで焼くと味は格段と違ってくる。 そして、炭の遠赤外線で焼き上がりが早い。 炭の火熾しには一家言がある。(勿論、着火剤を使うなどは論外) 乾いた木の葉や藁、細い小枝、中太の枝、割竹などは常備しておく。 風向きを考えて七輪の空気窓の方向を決める。 七輪に新聞紙を緩く丸めて入れマッチで火をつけ、木の葉や藁を入れ、小枝を火の回りを見ながら重ねる。 更に火の回りを見ながら中太の枝か割竹を組むように入れ、それを利用して炭が火から浮くようにそっと並べる。 後は、内輪でひたすら扇ぐ。 扇ぐ向きは七輪横の空気穴から、上から、斜めから、内輪の向きは横に縦に斜めに、そうすると備長炭から微かにチンチンという金属音のような音が聞こえてくる。 その音を聞いて更に扇ぐと、炭は抵抗を止め観念したようにメラメラと燃え始める。 この炭で焼いた干物の美味さは群を抜く。 また話が逸れそうになったが、今朝は食と道具の「かたち」、そしてその道具の「あつかい」を書いてみた...。
by finches
| 2009-10-09 07:05
| 嗜好
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