十思小学校は昭和3年(1928)に完成した復興小学校となる。 [注:中央区教育史には昭和4年竣工とある] 校名というのは夫々に命名の意味や由来があり、地名町名が当てられているものは分かり易いが、この十思(じっし)についてはその名を初めて目にした時から興味を抱いたものだ。そもそも何と読むのかさえ分からなかったからだ。 十思とは資治通鑑(しじつがん)に記されている十思之疎(じっしのそ)から取られたもので、これは唐の時代に天子のわきまえなければならない戒めを記した十箇條だそうだ。 その戒めはそのままこの学校の校風として受け継がれ、既に廃校にはなっているがここを巣立った子どもたちにとって、消えることのない処世訓として生き続けていることだろう。 十思小学校の特徴は何と言ってもそのコーナー部分の曲面とそこに設けられたアーチ窓だろう。 [注:同じ曲面でも明正小学校のようにデザインの処理如何によっては全く違った雰囲気になるのが分かる] そして、この設計の思想は屋内体操場へと踏襲され、その柔らかく優しいフォルムが何とも穏やかに街に溶け込んでいるのが微笑ましい。 十思小学校のもう一つの特徴として、復興小公園と呼ばれる十思公園に校庭が繋がるように計画されていることがある。そして、この公園の場所は伝馬町牢屋敷の跡地で、吉田松陰終焉の地としても知られている。 廃校となった十思小学校は、現在は十思スクエアとして第二の活路を見出しているが、理想はあくまでサステナブル建築として「小学校」として使い続けて欲しいところだ。しかし、時代の変化とともに閉校廃校が已む無しとしても、この「十思」のように新しい活路を住民と行政が一緒に考え、貴重な歴史・文化遺産として未来に継承して欲しいと心から思う...。
by finches
| 2009-04-01 12:00
| 復興
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