前稿で復興小学校の設計図面の描き方が雑だと書いたが、明石小学校とちょうど同じ大正15年8月に竣工した牛込区(現新宿区)の牛込高等小学校などのように丁寧且つ細やかに描かれた例も見られる。 これらは偏(ひとえ)に夫々の建物を担当した技師の実務経験の違いに加えて、実動部隊として技師をサポートした数名の技手たちを含めたチーム毎の姿勢と状況の違いによると思われる。 例え図面自体の描き方が雑だとしても、その中に設計図面として伝えるべき情報が網羅されていれば良い訳で、実際に完成した建物を見てもこの「雑さ」は決して手抜きの「雑さ」ではないことは言うまでもない。 これは筆者の推測だが100を優に超える鉄筋コンクリート造小学校校舎を次々に建設しなければならない状況の中で、その設計図面に個人差が生じたり、また表現の過少過多などの偏りが生じることを意識的に押さえ、それらを仕様書の類が補うと共に、小学校建築設計の為の統一規格が一種の設計監理マニュアルとなって質が担保され、全ての小学校に於いて均質な工事を遂行することを可能にしたのではないかと思う。 さて、写真は明石小学校の各教室の廊下側に設えられた小物掛の為の図面だが、余分なものが一切排除された中に、子どもたちに必要なものが何一つ落ちることなく描かれている。 見過ごてしまいそうなくらいの図面の片隅の描き込みだが、この図面がどれほど豊かなものへと変化し、それが現在の子どもたちにも大切に使い続けられていることか。 こんな所にも建築の記憶として沁み込んでいる無数の歴史がある...。 (下のMore→写真をクリックしてみてください)
by finches
| 2010-02-25 07:21
| 復興
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