305■■ 泰明小学校・建築の記憶
305■■ 泰明小学校・建築の記憶_b0125465_1455315.jpg[泰明小学校]
創立年月 明治11年6月
竣工年月 昭和4年6月4日
工事請負 錢高組
校地坪数 1,109.740坪
校舎坪数 1,298.564坪
学級規模 20学級 (現在12学級)
[所在地]
東京都中央区銀座5-1-13



夜の泰明小学校を撮影した後にたまたま撮った銀座B6出口をテーマに書いたことで、現存する震災復興小学校の一つである泰明小学校が持つ歴史背景を「空襲の記憶」「戦争の記憶」として書いてきたが、今回の「建築の記憶」がその最後となる。

最初の「空襲の記憶」でどの写真を使おうかと考えた。
もっと破壊の様子が分かるものもあったが、ほぼ同じ撮影アングルの写真を使ってそれぞれの時代を書いてみたいと思い、西側から撮影した3枚の写真を最初に選んでから書き始めた。

本稿の写真は現在の3階教室から撮影したものだが、「空襲の記憶」の写真が撮影された同じ教室から同じ方向を見た現在の姿となる。
泰明小学校(当時は泰明国民学校)は昭和20年1月の空襲でこの写真に写る窓の先隣りの2、3階教室とその直下の校長室(現保健室)と職員室が破壊され、4人の殉職教員と3人の負傷者を出している。
その破壊された3階教室の一つがこのアーチ窓の教室であり、窓から見える蔦の生い茂る光景は正に「戦争の記憶」の写真に生い茂る蔦そのものだ。

悲しく不幸な歴史を留める窓だが、これこそが歴史の語り部として建築が持つ記憶であり、この建物を小学校として使い続ける限り、建築が持つ記憶は生きた語り部として子どもたちの情操と感性を育み磨く力となってこの空間から滲み出て来る。

前稿の写真(昭和12年撮影)に校舎を覆う蔦が写っている。
現在の校舎を覆う緑の蔦はこの蔦の根が地下で生き続けた子孫だと筆者は思っている。
そんなところにもこの学び舎の正統な歴史を感じることができる...。



[注記]
「空襲の記憶」「戦争の記憶」「建築の記憶」をessay bibliophobia annexに纏めました。
 ◆ 泰明小学校・建築の記憶
by finches | 2010-03-13 06:46 | 復興


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