この建築も一先ず本稿で筆を置くことにしよう。 少年の「不思議な記憶」の引き出しからは外部だけでもまだまだ出て来そうだし、内部も同じように書いていたらいつまでたっても終われなくなりそうだから。 そこで、陰翳礼讃で始まったのだから、紫翳礼賛で終ってやろうと決めた。 隣りに文化会館が出来、どういう訳か両者の間に和風の庭が作られた。 竹があるのはその為で、ちょっとこの建築にはそぐわないように思う。 写真下の蔭の部分はホール客席に横から入る通路になっていて、緩く下るスロープに合わせて大きな窓とスリムな屋根が段々と下がっていく。 外から見るとこのリズミカルな繰り返しが背後のマッシブなホールと対比するように、軽やかで繊細で子供心にもそれが本当に綺麗だと思って見ていた。 そして、中から見ると緩いスロープのホール側には威厳のある入口扉が並び、それと対照的にスロープから同じ高さを保つ為に傾斜に合わせて段々と下がる大きな窓から見える線路や街の風景は、まるで下がる毎に新しい額縁で切り取られた世界のようで、その抜けるような解放感がこれから反対側の扉の奥で始まろうとするものへの期待を増幅させた。 写真上はホールの側面で、渋く鈍く輝く紫の塩焼タイルとコンクリート打ち放しの柱を深い庇のような屋根が覆い、正面の複層する量塊が次第に後退するような意匠とはっきり分けられているように見えながら、両者は決して分節されることなく繋がり見事に調和している。 そして、そこからは明らかにそれまでのように様式を纏った劇場建築にはない、モダンな匂いが香ってくる...。
by finches
| 2010-05-02 06:24
| 記憶
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