380■■ プレミアム カルピスの味

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数ヶ月前の明け方まだ暗い部屋に灯りも付けず、冷蔵庫からカルピスを取り出して飲んだ。
その時の印象は「カルピスってこんな味だったっけ? 美味しい!」と思った。
それは子供の頃自分好みの濃さを図ってカルピスと水の量を調節して作ったオリジナルな味、その味の記憶との比較を筆者の脳は瞬時に行いその印象を導き出した。

「冷蔵庫のカルピス飲みましたよ」
「どうだった、お味?」
「カルピスってあんなに美味しかったっけ? 美味しかったです!」

朝食を食べながらの取り留めのない会話だったが、明らかに家人の顔には自信が溢れ、自分だけがその秘密を知っているというような余裕の表情が伺われた。

「あれ、プレミアム カルピスって言うの、知ってた?」
「普通のカルピスとは違うの?」
「何処の店にも置いてないんだけど、近くの自販機だけにはこれがあるの!」
「きっと試験的に置いているんじゃないかと思うの!」

その表情はそれを売っている秘密の場所まで知っているという優越感に満ちていた。
だが、家人はまだこのプレミアム カルピスを飲んだことはなく、筆者が飲んで好印象だったことを嬉しそうにまるで自分のことのように喜んでいる。
以来我が家ではこのプレミアム カルピスを買い求めるようになり、家人も遅れてその恩恵をこうむり「やっぱり美味しい!」と喜んでいたが、ある日突然その自販機は普通のカルピスウォーターだけに変わった。

その落胆にもめげず新たな購入ルートを探していた家人だったが、その家人から差し入れが届いた。
なんと、その箱にはプレミアム カルピスが24本入っていた。

プレミアム カルピスは元々のカルピスに数千種類の中から2種類の乳酸菌を厳選して加え新たに生み出されたコクも白い色も一味違う逸品だ。
今では4月から始まったANAの有料ドリンクサービスのメニューの一つにもなって一本300円で販売されているが、家人にはまだ余り知られていないこの飲み物の創始的発見者としての自信とその後の独自の薀蓄(うんちく)も加わり、このプレミアム カルピスに関しては今や無敵だ。

子供の頃両親が買ってくれた何十巻もの世界文学全集はとうとう読まなかった。
Essay bibliophobiaの「bibliophobia」もその源を辿るとこの世界文学全集に行き着く。
家人の心の篭ったプレミアム カルピス24本、「Calpisphobia」にならなければいいが...。


[補記]
家人から指摘を受けないように、正式名称は「ザ・プレミアム カルピス」ということを書き添えておきます。
by finches | 2010-05-28 05:32 | 嗜好


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