447■■ 夏の弁当

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料理の写真は随分と撮り溜めている。
朝夕の食事は盛り付けが綺麗な時に写真に収める。
全てを撮っていたら日々の記録にはなっても、ちょっとつまらない。

作家の池波正太郎は日記にその日の食事を書いていたことが知られているが、料理を書くことで後からそれを読み返すとその料理のことは勿論、それを食べた時の情景やその日の行動までもが思い出せると、エッセイの中にも書いている。
筆者もそう思う、そう思って大事な時、楽しい時、綺麗な時、頑張った時、そんな時の料理は写真に収める。

思い返してみると初めて読んだエッセイは池波正太郎の「日曜日の万年筆」だった。
著者は歴史小説で知られているが、筆者はエッセイを中心とした現代ものばかりそのほとんどを持っている。
「日曜日の万年筆」を読んだ時は面白くなくて、確か途中で投げ出したように思う。
それは小説に慣れていた頭が初めてのエッセイというものに寛大でなかったせいだろう。

さて、そんな一方で欠かさずに撮る料理がある。
それは弁当の写真で、後から見ても実に楽しい。
昼の弁当は絵手紙のように、作った時の気持ちや心、そしてメッセージが込められているように思う。
どの弁当箱を選ぶか、それを包む布はどれにするか、そんなことまでがこの小さな包みの中には詰まっている正に絵手紙だ。

この日の包みはウサギ柄だった。
中は二段になっていて、下がおかず、上がご飯だが、この日の上段は葉蘭を敷いた上にお稲荷さんを並べ、真ん中に真っ赤なミニトマトが色を添えていた。
日本の弁当には形やものや色がつくり出す美しさがある。
この小さな包みに日本の美学と文化を感じるのは筆者だけだろうか...。

by finches | 2010-08-13 04:46 | 嗜好


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