ある美しい海への原発建設問題を取り上げた映画を観に行こうと、その日は如何なることがあってもそれを最優先すると決めていた。 当日、会場の図書館の場所と開演時間を調べていて、初めてその日が一ヶ月ずれていたことに気付いた。 その日は8月31日、その映画は7月31日に既に上映が終わっていた。 その日の朝刊である町での引揚船の展示を知り、映画と展示の掛け持ちを考えていた筆者の頭は、一方の引揚船の展示だけでもどうしても観たいとその町へと向かわせた。 引揚船と言えば舞鶴港が有名だが、全国で引き揚げが行われた港は12に及び、延べ620万人近くの人々がこれらの港から祖国の地を踏んだ。 会場を出ると湾を一望できそうな小山に登り、安易に想像したなどとは言ってはならないと思いながらも、筆者の頭は勝手に当時の町や湾内の様子を想像していた。 帰りに一度訪れてみたいと思っていた小さな砂浜まで足を延ばしてみた。 その美しい海岸には二人の釣り人がいるだけで、砂浜の先に海と空だけが水平線の彼方まで続いていた。 この海の先には大陸があって、そこからの引揚船がこの水平線の彼方から現れ、さっき見下ろした波静かな湾に向かって行ったのだろうと、筆者の頭は勝手にまた新たな想像を巡らしていた。 子供の頃、こんな美しい海があるのかと思ったその海に、この目の前の海は続いている。 美しい海への原発建設を取り上げた映画、その映画はまだ観ていないが、その美しい海への不条理な原発建設がもう一つの美しい海へと筆者を連れて来てくれた。 今や清掃工場が都市の中にあるのが当たり前のように、原発こそその電力を最も必要としている都市に造るべきだと思う。 ヨーロッパの原発が田園風景の中や都市の直ぐ傍にあるように、隠すように造るのではなくそれが本当に必要ならば、堂々と人々の目に触れる場所に造るべきだろう。 思わずこの美しい海に原発建設が持ち上がったらと考えていた...。
by finches
| 2010-09-04 06:52
| 記憶
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