641■■ 津波想定高さ 09 -岩手県の場合
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岩手県地震・津波シミュレーション及び被害想定調査に関する報告書





昨夜、東京電力福島第一原子力発電所を襲った津波の高さが14mより高い15mであったという報道がありました。
それは東京電力社員が携帯電話で撮影したという映像を東電が新たに公表し、合わせてその高さを15mと訂正がされました。

津波の最大遡上高さという言葉があり、これは津波の到達する最高の標高を指すものです。
福島第一原発の場合の津波の高さとは、地表面からの高さを示す浸水深さ、即ち建物外壁に最も強く濃く残る水位の痕跡を実測したものでなければならないと考えます。

現在東京電力は津波の高さが如何に高かったかをアピールし、そのことをして如何に今回の津波が想定外であり、それによる事故は避けることができなかった自然の驚異によるものだと信じ込ませようと躍起ですが、拙稿の読者にはここで書いていることの中から事実と真実だけを正しく読み取っていただき、そこからこの問題の本質を正確に捉えて欲しいと願っています。

さて、意外な報道から前置きが長くなりましたが、今回は岩手県によって2004年に作成された資料を取り上げてみようと思います。
それは『岩手県地震・津波シミュレーション及び被害想定調査に関する報告書(概要版)』で、全191ページに及ぶ報告書です。

その報告書は、明治以降を見ても明治三陸津波、昭和三陸津波、チリ津波などの大きな津波に見舞われていることをはっきりと説明した上で、国では2033年までに宮城沖地震が発生する確率が99%、更に明治三陸津波級の地震が起きる確立は20%と評価していることも伝えています。
そして、津波の高さが1986年明治三陸津波では大船渡で38m、1933年昭和三陸津波では同じく大船渡で28m、1793年宮城県沖津波では釜石の北の両石で9mであったことが既に発表されている論文のグラフによって示されています。

そして、これらの津波の検証を行った上で、起こり得る津波の予測計算を行い、建物被害,人的被害,道路被害,ライフライン被害などの予測が明らかにされています。
また、津波による浸水予測図と津波の遡上もCGで示されています。
それを見ると、この度の津波の比ではありませんが、それぞれの町の浸水の様子がかなり緻密に予測され、それらの情報は7年前には近隣県も国も専門家も、そして東北電力を始め各電力会社も共有していたことになります。

東京電力による原発事故は想定外なる主張は論外としても、今回津波の被害を受けた市町村がこれだけ詳細に各市町村の被害状況を予測した報告書が作成されているにもかかわらず、それを生かせなかったことが返す返すも残念でなりません。
周知されたそれらの情報があっても、地震発生から津波が襲来する短い時間での避難が如何に難しいことかを思い知らされます。

1990年に箕浦東北大教授により869年貞観津波の堆積地層が発見され、その後も同教授や産業技術総合研究所によって詳細な貞観津波の研究・解析が続けられ、2001年から2007年にかけて次々にそれらの結果は論文として発表されています。
今回少しですがその内容について紹介した岩手県による報告書もその中の一つです。
そして、それらの全ての資料は共有できていたのです。
by finches | 2011-04-10 04:03 | 無題


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