ある銘材店を訪ね木材置き場を見せてもらった。 そこには人工的に強制乾燥させた黒ずんだものや、防腐剤を滲み込ませた緑がかったものなどはなく、大屋根が日陰を作り風が抜けるように配慮された置き場には、天然乾燥の木材に更に風を当てることで木にとって最も自然な状態を保ちつつ、ベストな状態での出荷をしようとするその銘材店の姿勢が感じられた。 特段珍しいものはなくこの地域で一般的に流通しているものがそこには置かれていたが、トガの良材と入荷したばかりというホワイトウッドなどにも説明を加えてくれた。 片仮名だと直ぐに外材だと分るが、同じ片仮名でもトガとなると和名を頭で想像する。 しばしば聞く言葉だが、トガってどんな木だっけと考えた。 トガとツガは同じなのか、ツガと米ツガは別のもの、信州にはイチイをトガと呼ぶ地域もある、イチイである筈はないがトガとツガが同じなら何故二つを分けるのだろうか、そんなことを考えながら結局トガという木の正体は何だろうというところで止まった。 板名が書かれた63種類の板の中も探してみた。 だが、やはりトガという木はそこにはなかった。 開けたついでに長い間買った時のままの紙箱に眠っていた63枚の板の埃を払い、手頃な杉箱に並べ直した。 最も重い黒檀から最も軽い桐まで、重さも色もまちまちのそれらの板を眺めながら、昔の高い買物もやっと日の目を見る時が来たと思った。 以前は木目や色でその材の良し悪しを好き嫌いで選んでいたとしたら、今はそれらの木が育った森のことを思うようになった。 そして、どんな木でもそれを使う限りは無駄なく使い切ろうと思うようになった。 ところで、国産の本物のトガとツガにどこかで出合えるまで、それまで止まった疑問は胸に仕舞っておこう...。
by finches
| 2011-10-06 05:45
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