昨年、とある偶然から一人の男と知り合った。 そして、彼の銘木店から桧と栗の板を買い求めた。 全国に銘木店は数多あれど、これ程の店に出合ったのは初めてだった。 初めて訪れた時、その倉庫を見せてくれそれだけでも驚いたが、続いて港近くの保管場所にも案内してくれ、そこに堆く積まれた銘木にはいやはや垂涎の溜息をついた。 中でもお寺に納めるためのストックだという栗材は、分厚く一目で高価な良材だと分った。 その帰り、山間にある三軒の製材所を紹介してもらった。 後で聞いた話だが、夕方近くに店を出たその足で、直ぐに山間の三軒を訪ねたことに実は驚いたと聞かされた。 紹介された中の二軒とは実際に付き合った。 一軒からは杉の板とピーラー(米松の目の詰まった柾材)を、もう一軒からは栗と銀杏と松の端材を買い求めた。 二回目にその店を訪れた時、更に山の上の保管場所にも案内してくれた。 栗ばかりを置いている、それも寺用にという厚材はそれは見事なものだった。 その帰り、その店が納めたという重要文化財の寺に立ち寄った。 そして、そこに使われていた栗の厚板には天然の木の威厳と風格を感じた。 三回目にその店を訪れた時、彼の親父からこの杯をもらった。 その親父はとにかく銘木が好きで、後先考えずに買うのだと彼は嘆いていたが、この杯も何本か買った屋久杉の余り木から作ったというもので、これで飲むと美味いからと、寡黙で気難しそうな親父が一言口を開いて手渡された。 この屋久杉の杯を握ると木の温もりが伝わってくる。 親子で考え方は違っていても木への想いは同じなのだと、この杯を握る度に思う...。
by finches
| 2011-12-11 05:22
| 無題
|
タグ
essay(1007)
昭和(243) かたち(185) 震災復興小学校(96) 箸休め(71) 震災復興橋梁(57) 橋(45) 大正(43) 近代モダン小学校(39) 函館(27) 江戸(24) essay bibliophobia annex(24) 明治(14) essay bibliophobia nuclear(6) 未分類(2) essay bibliophobia annexⅱ(1) 検索
カテゴリ
時間空間 記憶 季節 復興 嗜好 信条 地理 遺産 持続 無題 復興小学校 近代モダン小学校 フォロー中のブログ
Ever Greennaruhodo (茶房... ezzoforte 関根要太郎研究室@はこだて 函館 ・ 弥生小学校の保... I shall be r... リンク
虚数の森
菜滋記 透明タペストリー Clocks & Clouds 以前の記事
2017年 01月2015年 02月 2014年 03月 2014年 02月 2014年 01月 2013年 12月 2013年 11月 2013年 10月 2013年 09月 2013年 08月 2013年 07月 2013年 06月 2013年 05月 2013年 04月 2013年 03月 2013年 02月 2013年 01月 2012年 12月 2012年 11月 2012年 10月 2012年 09月 2012年 08月 2012年 07月 2012年 06月 2012年 05月 2012年 04月 2012年 03月 2012年 02月 2012年 01月 2011年 12月 2011年 11月 2011年 10月 2011年 09月 2011年 08月 2011年 07月 2011年 06月 2011年 05月 2011年 04月 2011年 03月 2011年 02月 2011年 01月 2010年 12月 2010年 11月 2010年 10月 2010年 09月 2010年 08月 2010年 07月 2010年 06月 2010年 05月 2010年 04月 2010年 03月 2010年 02月 2010年 01月 2009年 12月 2009年 11月 2009年 10月 2009年 09月 2009年 08月 2009年 07月 2009年 06月 2009年 05月 2009年 04月 その他のジャンル
画像一覧
|
ファン申請 |
||