とある市場の天井だ。 テーマを『重い屋根』としたのは、次稿に予定している『軽い屋根』に対比してのことだ。 強いて言えば、コンクリートのイメージが重さを象徴しているとも言えるが、この屋根を支える構造自体は寧ろ軽やかでさえある。 この市場の屋根は斜張式吊り構造と張弦梁構造の屋根を途中で繋ぐという世界初の試みで生まれた。 写真は張弦梁構造の部分だが、柱に邪魔されない広々とした市場の空間が広がってる。 広い無柱空間を実現する方法として、圧縮する力と引っ張る力を上手く使うことでこのような大空間を生むことができる。 圧縮には強いが引っ張りには弱いコンクリートを、敢えて引っ張られる側に使っているが、テンションを掛けたプレキャストコンクリートを使うことで、工事工程の簡略化とメインテナンスの簡素化を同時に実現しているところがここに隠された味噌でもある。 海峡に面したこの市場からは海峡を跨ぐ巨大な吊り橋が望める。 そして、もう一方の斜張式吊り構造のポストと斜張材が、まるでその吊り橋と呼応するかのように見通せる。 海峡の対岸には歴史のある街があり、そこには古い面影が残っている。 そして、この市場の辺りにも古い歴史的建造物が残っている。 かつてこの市場の近くからは対岸の街まで船で渡ることができたが、それは今も残っているだろうか。 そんなことを思いながら、貨物船の行き交う海峡越しに対岸の街を眺めた...。
by finches
| 2011-12-14 04:15
| 空間
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