小雪が舞う日曜日、小さな電車の旅を楽しんだ。 それはその街を歩いてみたいと思ったからで、最後は水族館に行こうとだけ決めていた。 手首につけたnanoは16,377歩と表示していたから、凡そ10キロを歩いたことになる。 改札を出ると先ず生涯の仕事を決めるきっかけとなった場所を訪れ、当時あるものに凝っていて通った店のあった通りにも行ってみた。 前者はそのまま今も残り、後者はその店があった場所の面影さえも、記憶の中の風景と繋がるものは何一つ残されてはいなかった。 何せ中学生の時のことだから無理もない。 図書館にも立ち寄った。 お目当てはレファレンス、蒐集資料のボリュームと内容をざっと見て歩いた。 書庫に置かれた閉架の資料までをも想像すると、流石にその内容には期待が持てた。 筆者の場合はそこまで分ると図書館での当面の目的は達せられ、後は調べたい内容によって再訪すればいいことになる。 暖かかった図書館を出ると、外は手袋なしではいられないくらい寒かった。 だが、歩いたお蔭で随分と街の地勢が分ったし、見たかったものも街との関係の中で見ることができた。 最後の水族館は帰りのバスの時間までゆっくりと過ごした。 最近の博物館や歴史資料館の展示の仕方が何処も同じように、水族館にもその傾向があるように思う。 そのことには直ぐに気付き、最初に現れた水槽の見せ方の演出はまるで葛西水族園と同じだと冷笑したが、その水族館のオリジナルテーマが分ってくると、他とのつまらぬ比較などは止めて素直な気持ちで楽しむことができた。 今水族館の建っている一角は最初の二つと共に好きだった場所だ。 それは、最初の二つが何か新しいものを感じる場所であったのに対して、そこはその街の古い歴史を感じる場所だったからだ。 そこにあった古い建物は今も保存され残っていたが、それ以外は大きく様変わりしていた。 だが、最後に水族館を訪れたことで、今までその一角の変貌を拒絶し目を逸らしていたかつての大好きな場所を、また少し好きになれたように思った...。
by finches
| 2012-02-20 04:17
| 時間
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