868■■ 海からの収獲-四月

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家人との弁当とワイン持参の花見が急遽転じて、友人夫婦とのマテ貝掘りとなった。
杣の森へと続く川を渡り、広大な塩田址を過ぎ、歴史ある港から小さな赤い回転橋を渡ってその島に入った。
温かいとは言え、海を吹く風はまだ少し肌寒く、迂闊にも無防備だった腕からその寒さは入ってきた。

潮が引くまでの間、風避けの大岩の陰で持参した弁当を広げた。
持ち寄った弁当や惣菜をシェアし、ワインを楽しみながら潮が引くのを待った。
筆者は腕からの寒さに堪りかね、寒くはないという家人に借りたコートを肩に巻いて寒さを凌いだ。

暫くするともう一人が寒さを訴え始め、その様子にどうも筆者よりは寒そうだと感じ家人のコートはそっちに移った。
そうこうしているうちに潮も引き、マテ貝掘りが始まった。

マテ貝掘りは砂をサッとスコップで削り、現れた小穴に塩をサッと振り掛ける。
暫くすると棒状のマテ貝が小穴からヒュッと出てきたところを引き上げて捕まえる。
マテ貝は穴から出た瞬間まだ潮は満ちていないことに、これは策略だと気付くや否や直ぐに穴に戻るから、モグラ叩きのようにモタモタしていると直ぐに引っ込んでしまう。

寒くはないと言っていた筈の家人がオズの魔法使いのカカシのように、はたまた木の葉を上手に貼り付けたみの虫のように、食事の時に敷いたシートを体に巻き付けマテ貝掘りに余念のない姿に、「彼女らしいな」と思いながらその姿を何枚も写真に収めた。

マテ貝掘りは十分に楽しんだ。
他にもニシ貝や若布や海鼠もその日の収獲に加わった。
筆者は海鼠をウミウシの背中に乗せて遊んだ。

桜は山の中腹にあった。
桜の下の花見ではなかったが、潮の匂いを嗅ぎながら遠くに見る桜もいいものだった。
いい季節が始まった...。

by finches | 2012-04-10 05:35 | 季節


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